AIに仕事が奪われた未来は、地獄?天国?

税理士を目指していた大学3年生は、友人から「税理士って職業はAIで将来はなくなるらしいよ。就職活動したほうがいいんじゃない?」と心配されたものの、反論できなかったそうです。

新しいテクノロジーは人間を不安にさせます。

チャップリンの名作「モダン・タイムス」は「産業と個人企業と、幸福を追い求めて戦う人間性の物語」(A story of industry, of individual enterprise – humanity crusading in the pursuit of happiness.)という字幕ではじまりますが、産業革命当時の人間が感じていたであろう不安をわたしたちも今感じているのかもしれません。

動画:モダン・タイムス

さて、AIという新しいテクノロジーにより「自動化 ⇒ 無職」になると予想する人は多いですし、実際にそうなると思いますが、、、、救いがないわけではないのです。

AIという新しいテクノロジーに過剰な不安を抱えている方は、是非とも最後までお付き合い下さい。

高年収で結婚できない深い理由

あるネット記事で、「高年収男性が結婚したくても結婚できない男性」へのインタビュー記事が掲載されていました。

「収入が安定しないから結婚しない」という人があまりにも多い中、どうして高年収なのに結婚できないのでしょうか?

インタビューに応じた男性たちの主張は、かいつまんでいうと「結婚を真剣に望んだ時にはお金が目当ての女性としか出会えなくなった。」というものでした。

「高収入 ⇒ モテる ⇒ 結婚」という一見すると誰もが疑わない説得力のある公式は、必ず成立するというわけではないのです。

同様に、「AIによる自動化 ⇒ 無職」という一見すると誰もが疑わない説得力のある公式ですら、必ずしも成立するというわけではないのですが、そのカラクリをわかりやすく解説したいと思います。

安全装置

メガバンクでは、すでにAIによる自動化で人員削減や配置転換の影響がでてきています。

例えば、融資の実行に必要だった書類が「なくなる」ので、書類をチェックする仕事自体が「なくなる」といった具合です。

しかし「完全に仕事がなくなる」なんてことはあり得るのでしょうか?

その答えは『NO』です。その理由なカラクリについてサクッと説明します。

まず、この世から仕事がなくなるということは、労働者の収入が減るということです。そして労働者の収入が減れば、労働者の消費も減少するでしょう。

では労働者の消費が減ると、企業は得をするのでしょうか?

もちろん労働者をAIに置き換えれば、短期的には企業の利益は増えるでしょう。

しかし人間の労働力をAIに置き換えるということは長期的な企業利益には直結しないのです。そもそも労働者を生産活動から完全に締め出すなんてことは非現実的なことのです。

なぜならばコストカットにどれだけ成功しようが、企業の売上の源泉は「消費者の給料」だからです。

仮に労働者を生産活動から追い出したところで、AIはお金を使うプレーヤーにはなりません。

お金を使うのは人間だけです。企業に利益をもたらしてくれるのも「人間」ですし、国に納税するのも「人間」だということは忘れてはいけない事実です。ということは????

AIへの投資はどこかのタイミングで頭打ちになり「AIに投資するよりも人間に投資したほうがマシ」という状況が生まれるということです。

経済学者でありギリシャの元財務大臣の『ヤニス・バルファキス』は、わたしが今説明したことをギリシャ神話の『イカロスの翼』を引用してわかりやすく解説しています。

とはいえギリシャ神話にはなじみがない人の方が多いと思うので、要点だけをわかりやすく説明しておきます。

イカロスの翼

ギリシャ神話に登場するラビリンス(迷宮)の設計者であるダイダロスは、陸と海を支配するミーノース王の逆鱗に触れてしまい、息子であるイカロスとともにラビリンス(迷宮)に閉じ込められてしまいます。

ラビリンス(迷宮)からなんとか脱出したいと考えたダイダロスはこう考えました。

陸と海を支配するミーノース王であっても、大空を支配することはできないだろう」と。そこでダイダロスは、鳥の羽を蝋(ロウ)で固めて翼を完成させます。

翼を手にしたダイダロスとその息子のイカロスは、大空に飛び立ち、見事ラビリンス(迷宮)からの脱出に成功するのでした。めでたしめでたし。。。。。とは残念ながらなりませんでした。

空を飛ぶことが楽しくなってしまったイカロスは、父であるダイダロスの忠告を無視して空高く飛んでしまうのです。

空高く飛んだイカロスの翼は太陽の熱で溶けてしまい、海に真っ逆さまに落ちたイカロスは命を落としてしまうのでした。

以上がイカロスの翼の要点ですが、AI技術もイカロスの翼と同じ運命にあるということを『ヤニス・バルファキス』指摘しているのです。

翼があれば空高く飛ぶことはできます。しかし蝋(ロウ)でつくった翼が一定の高度に到達すると太陽の熱で溶かされたように、AI技術が人間の仕事を完全に奪うようなこともないのです。

参考)シャガール〈イカロスの墜落〉

イカロスの翼

【出典:ポンピドゥー・センター】

安心はできない

これまでの話を聞いたあなたは「よかった!人間の仕事が完全に奪われるわけじゃないんだ!」とほっと胸をなでおろすかもしれません。

しかし楽観視することはできません。なぜならばAIによって人間の仕事は間違いなく奪われるでしょうし、AI技術ではなく人間の労働力が優遇されるのはあくまでも「AIに投資するよりも人間に投資したほうが安いから。」という動機が背後にあるからです。

つまりAI技術が浸透した社会で求められる労働力とは「AIテクノロジーの代替としての労働力」だということです。ひらたくいえば「人間は低賃金でロボットのようにこき使われる」でしょう。

実はすでにAmazonの倉庫で働くピッカー(倉庫に点在する配送物を一か所にまとめる仕事)はロボットのように扱われていることが問題視されています。つまりほとんどの労働者が望まないであろう未来は、「すでに到来している。」のです。

AIに苦しめられる理由

もしかするとあなたは、「人類の生活を豊かにするテクノロジーが逆に労働者を苦しめるなんて、、、、、そもそもおかしくないか?」と違和感をもっているかもしれません。

そもそも、、、、なぜ?????人類の生活を豊かにするテクノロジーが労働者の生活を苦しいものにしているのでしょうか?

その理由はカンタンです。テクノロジーの恩恵を一部の人間が独占する構造が強化され続けているからです。

グローバル企業は雀の涙ほどの納税しかしませんし、世界中の国家はそれを取り締まることができません。(グローバル企業に高い税率を課そうとしてもすぐに逃げられてしまうから。)

消費者が消費をすればするほど企業や国が潤う ⇒ その潤いが労働者に還流する ⇒ 経済発展の恩恵を労働者が実感できる  ⇒  未来に明るい展望が描けるので家族をつくり消費する⇒(以下繰り返し)

という流れが断ち切られていることが、AI技術がわたしたちの生活を豊かにしない原因の一つです。

ではどうすれば、、、、、ロボットのように低賃金でこき使われる労働者になることを回避できるのでしょうか?

残された選択肢

選択肢は2つあります。

選択肢1)搾取する側になる

1つ目の選択肢は「テクノロジーの恩恵を享受できる立場になる」です。

具体的には、テクノロジーの恩恵を受ける企業に就職しそこでのポジションを死守し続けるとか、そのような企業の株主になるという方法などが考えられます。

選択肢2)入れ換え不可能な人材になる

2つ目の選択肢は、「入れ替え不可能な人材になる」です。

ひらたくいえば「あなたじゃなきゃダメなんです。」と見込み客からいわれるような存在になることを目指しましょう。

具体的には、AIにはできない仕事、もしくはAIが代替するには非合理的な仕事を生み出すことができれば、あなたはロボットのように安くこき使われることはないでしょう。

最後に

もう20年以上も昔の話ですが、1964年の東京オリンピック金メダリスト三宅義信から今でも忘れられない言葉をもらいました。

10年本気で努力しても金メダルをとれるかはわからないが『何者かにはなれる』と思う。」と。

これから先の10年、あなたは『何者』を目指しますか?